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2005年9月 9日 (金)

歯周病は歯の癌です

衝撃的なタイトルをつけてしまいました。これは歯周病が癌に進行するという訳ではなく、その病態や進行具合が非常に似ているのでこのように書きました。癌が進行すれば命を落とします。歯周病が進行すれば、最後はその歯が抜歯あるいは自然脱落してなくなります。これは、命を落とすわけではありませんが、その歯にとっては死を意味します。

ではこの二つの病態を比較してみましょう。歯周病の実態が見えてくると思います。

歯周病の初期は痛みなどの自覚症状がほとんどありません。歯磨きをするとたまに出血がある程度で、それも何日かすると止まるので、歯周病にかかっているという自覚を持っている人はあまりいません。

若い人がかかる歯肉炎と歯周病は似たような症状を呈するのですが、その大きな違いは歯を支えている骨が溶けているかいないかです。歯肉炎は単にプラークコントロールが悪いために歯ぐきが炎症を起こして腫れているだけで、骨にはまだ異常がありません。しかし、この状態で年齢を重ねて行くと骨が溶け出して歯周炎に移行していきます。

ですから、どの段階で歯肉炎から歯周炎に移行するのか線引きする事はできませんので、ある程度の年齢(30歳前後)になり、レントゲンで歯を支える歯槽骨の欠損が認められたら歯周炎という診断をくだします。

少々骨が溶け出しても、まだ歯がぐらついたり噛む時に痛みを感じたりする事はありませんので、自覚症状は前述したようにほとんどありません。この段階で治療すると、短期間に少ない回数で完治させる事ができます。もちろん費用も少なくて済みます。

癌も同じで、自覚症状がほとんど無い段階で、検診などでたまたま見つかったようなごく初期の癌は、手術などをしなくても、今は内視鏡などを使って取り除く事ができるものも増えてきました。当然完治させる事も容易ですし、予後良好です。

歯周病も中期に入ると、かなり自覚症状が出てきます。歯肉の腫れや出血に加えて歯が少し動くようになり、場所によっては歯ぐきが下がってきて歯がしみるようになります。前歯が開いてきたり、だんだん前へ出てきて出っ歯になってきたりもします。固いものも多少噛みづらくなり、食事が美味しくなくなります。時々歯ぐきが急性発作を起こして強い腫れや排膿もみられます。こうなると、歯槽骨の状態としては、元々ある量の半分くらいまで溶けています。

今の技術では、一旦溶けた骨を完全にもとの状態まで回復させる事は不可能です。材料や技術の発達で、ある程度の骨の回復はできるようになりましたが、特殊な治療のため健康保険の範囲内ではできませんし、それらを使っても元通りにはなりません。つまり、治療を行っても良くて現状維持ということになります。歯ぐきの中の方まで歯石がこびりついていますので、そのままでは痛くてとれないため、麻酔を使って場合によっては歯茎の手術や移植などが必要になる場合あります。

当然、治療回数、期間、費用もかかりますし、痛みを伴う場合も多々あります。最後まで頑張ったとしても完治させる事は大変難しく、予後があまり思わしくない場合も出てきます。

癌も同じで、大きな手術などが必要になる場合もあり、生存率もだんだん下がってきます。ある程度治癒の状態に持っていけたとしても、例えば胃や乳房、手足などを摘出したりと、その後の生活の質を下げてしまう場合もあるでしょう。完全にもとの健康な状態に戻す事は難しくなります。

歯周病も末期に入ると、完治させるというよりも、歯の延命処置が増えてきて、「もたせるだけもたせましょう」というような説明が増えてきます。当然固いものは食べられず、丸呑みに近い状態ですので、胃腸の負担も増えるでしょう。患者様が納得した段階で抜歯となります。また、自然と抜け落ちる場合もあります。常に出血、排膿、強い口臭などに悩まされます。

癌も末期になると、治すというよりは、クスリで痛みを取り除いたり、延命のための簡単な手術をしたりという程度で、その人の、残された時間をなるべく有効に使っていただこうというような対処になります。

どうでしょうか。歯周病と癌、似てると思いませんか。自覚症状も無くじわじわと進行するところなどそっくりです。ある程度の年齢になると、みなさん人間ドックや成人病の健診にいかれると思います。最近やっと、その中に歯科の健診が取り込まれてきましたが、まだまだ100%ではありません。また、その様な健診を受けだすのはだいたい40歳前後だと思いますが、歯周病の場合はその年齢だと遅い場合がありますので、できたら若いうちから健診もかねたメンテナンスに通われる事をお勧めいたします。

歯周病は細菌感染症です。つまり、細菌をうまくコントロールすれば十分に防げる病気なのです。日本には、どうもないのに定期的に歯科に通うという習慣がまだまだ確立していません。早く欧米なみの意識改革をしていただいて、最後まで自分の歯で美味しく食べられる幸せをかみしめていただきたいと切に思います。

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