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2006年1月31日 (火)

健康はあごの矯正から

歯の矯正は皆さん聞かれたことがあると思います。しかし、あごの矯正となるといかがでしょうか。あごが成長しすぎたり、変形したりして手術をして矯正する場合がありますが、私が言う「あごの矯正」とは少し話が違います。

私が行なうあごの矯正はMPAというマウスピースのような取り外し可能な装置を使って行ないます。熊本の西原出身の(どうでもよいことですが同郷なもので)森高千里が以前かかって、芸能活動を中止した事がある「顎関節症」という病気の治療で使うスプリントというものに似ていますが、その考え方や構造は全く違います。先週ある患者様の治療に取り掛かりましたので、その経過を少しご紹介いたします。

患者様は42歳女性で、今月の6日に初診で来られています。その時の主訴を列挙しますと                              ・12月に整体に行ってから手がしびれたり、その後からあごの関節が  重くなった。あごが痛くなって一週間くらいあごがすっきりしないのが続いている。                                     ・中学生の頃からあごがカクカク鳴っていた。その後音は消えた。  ・首のこり、腰痛が強い。週に1回くらい偏頭痛で痛み止めを飲む。

というものでした。その日にかみ合わせの調整をして、あごの痛みはすぐに楽になったのですが、その他の症状はまだすっきりしませんでした。私の診断ではあごのズレがかなり大きく、歯の微調整だけでは全てを解決するのは無理だと判断しましたので、あごの矯正をすることにしました。

27日にMPAという装置を入れて、30日に症状確認と調整をしました。装着前にあった症状で、装着後なくなった症状を列挙すると         ・パワーが出ない ・体力がない  ・疲れやすい                                                                   ・虚弱体質  ・消極的 ・何もする気がない                ・キレやすい ・昼間に眠い ・気が滅入る                 ・頭痛 ・顎関節の痛み、雑音 ・肩こり                   ・手の冷え ・手のしびれ ・腕のしびれ                   ・足のしびれ ・動悸 ・胸やけ                          ・歯ぎしり ・くいしばり  

装着後、軽減した症状が                            ・顔の歪み ・顔の肌荒れ ・首筋のこり                  ・腰痛

装着後も変わらない症状は                          ・何となく不安 ・寝起きが悪い ・不眠                    ・猫背 ・目が見えにくい ・乗り物酔い                    ・花粉症 ・腕が上がらない ・低血圧                    ・腹部膨満感

という事でした。これらは大阪大学名誉教授の丸山剛郎先生が作られた「全身健康調査票」というものから抜粋したもので、あごの矯正をして治った97項目の全身に係わる症状の調査票です。これは、またいつかご紹介いたしますが、こんな病気や症状が歯科の治療で治るのかと、きっと思われるでしょう。

もちろん、歯科の治療で全てが治せるなどというおこがましい事を言うつもりは毛頭ありません。しかし、逆に世間には、医者で検査してもどこも悪くないんだけれど、どうしても体調がすぐれないという方は非常に多くいらっしゃいます。不定愁訴という言い方をしますが、その方々は、結局症状を消すための対処療法として。クスリを飲み続ける事になります。以前も書きましたが、クスリには必ず副作用がありますので、それを原因としてまた新たな問題を生じます。そのあたりは、安保徹先生の本を参考にされて下さい。

あごの矯正に関しては、まだほとんど知られていません。また、かなり難しい所があり、私も全てをマスターしているという訳ではありません。しかし、結果的にこの治療で健康を取り戻している方はたくさんいらっしゃいます。また、自分では健康だと思っている方も、診査診断してみると、自覚症状はないものの、自分の潜在能力の60%とか70%くらいしか使えていない方もたくさんいらっしゃいます。特に年齢が下がるほど、ズレが大きくなる傾向があります。これは食習慣や生活習慣などに起因すると思われます。これもまた折に触れて提言していきたいと思います。

この治療をしている我々の目標は「健康と長寿」です。単に健康を取り戻すだけではなく、若返りやアンチエイジングまでできると考えています。人間の対応年数は120歳だそうです。そこまで健康で生きるためにあごの矯正を提案しています。少々大げさに聞こえるかもしれませんが、私は十分貢献できるという手ごたえを感じています。

先に述べましたが、今の子どもが非常に危ないです。床に垂直な柱やタンスなどの角の前に立たせて観察してみて下さい。(最近の手抜き工事の家は家そのものが傾いているかもしれません。ご注意。ひもにおもりをつるすのが一番正確です)両足の真ん中、おへそ、首の真ん中、鼻、両目の間を結ぶ線を想定してみて下さい。それがまず真っすぐでしょうか。ジグザグしていませんか。また、真っすぐなら、それが柱やタンスの角の線と平行でしょうか?これで体の歪みがわかります。今の子ども達はかなりゆがんでいる子が多い気がします。体の歪みは、頭痛、肩こり、腰痛をはじめ、様々な症状につながる事は想像できると思います。

私の師匠は、子供の危機的状況を考えると日本は滅ぶとまで言っています。皆様はどう感じられたでしょうか?全く新しい考え方ですので、今かかられている歯科医院の先生がご存知とは限りません。逆に眉唾の治療と批判される事も多々あります。疑問、質問は遠慮なく私の方までお寄せください。みんなで元気になって充実した日々を過ごしましょう。

                       

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2006年1月27日 (金)

健康になる食事パートⅡ(油と砂糖)

食に関しては、様々な方がたくさんの本を書かれています。中には極端すぎて、修行のような内容や、とても続かないだろうと思われる内容、ちょっと首をかしげたくなるような内容のものもあります。その中で、私が一番参考にしているのが、幕内秀夫さんの本です。この方は管理栄養士で、いくつかの病院食や最近は食の崩壊を止めるため、社員食堂の改革なども手がけられているようです。

昨日もラジオで言っていましたが、日本の食料自給率は40%くらいで、先進国の中では圧倒的に最下位だそうです。しかも、減反政策などさらに自給率を下げるような政策がなお続けられています。いくら経済力があるとしても、いざという時に諸外国が食料を売らないと言ったらどうなるのでしょうか。もちろん国同士の関係はそんな単純なものではないでしょうが、最後は持っている国の方が強いのではないでしょうか。昨今の原油高騰などを見ても、同じ事が言えるような気がします。

さて、この幕内さんの本に共通する事は、今すぐ実行できる事、長続きする事を書いてあるところに共感します。例えば、野菜一つにしても理想を言えば国産の無農薬有機野菜で新鮮なものという事になるでしょうが、現実問題として、その様なものが年間を通して全ての方に手に入るかというと、それは不可能だと思います。ほとんどを輸入に頼っている作物もたくさんあると思います。

その様な日本の現状の中で、理想を目指すのではなく、マイナスを減らしていくかという考え方で書かれていますので、現実とのギャップが小さい分、長く実行できるでしょう。何回かに分けてご紹介していきたいと思います。もちろん皆様にこれを押し付けるのではなく、一つの参考にしていただきたいと思います。私も食に関しては色々取り組んできましたが(健康診断でいつも体重を落とすように指摘されますので)現在は家族全員、この幕内さんの本を参考に食を考えています。

さて、いくつかのキーワードがありますが、その一つが「何を食べないか」です。特に注意するのが「油」と「砂糖」です。この一週間の朝昼晩、間食を思い浮かべてください。その中で、油や砂糖を使っていない食事は何回あったでしょうか。本来、日本人が昔から食べている日本食はほとんど油や砂糖を使いません。食事が西洋化するにつれてそれらの使用量が多くなってきます。

揚げ物、炒め物だけでなく、朝パンに塗るバターやマーガリン、ジャム類、野菜を食べるのは良いのですが、それにたっぷりかけるドレッシングやマヨネーズ、間食としてついつい口に入れてしまうお菓子類や糖分入りの缶コーヒー、缶ジュース、昼飯代を浮かせるために、あるいは時間を節約するために食べるハンバーガー類などなど気を付けてみると、思った以上に油と砂糖を採っていることを自覚すると思います。

ちなみに、幕内さんいわく、日本人が朝食として食べているパンは主食ではなく、お菓子に分類するそうです。それは、日本のパンは真っ白でふわふわで、かみごたえのない、軽いものがほとんどだそうです。これは何を意味するかと言うと、小麦粉をとことん精白して、場合によっては白くするため漂白して作ります。お米の玄米と白米の違いを思い浮かべればよくわかると思います。どちらが体に良いかは言うまでも無いでしょう。ちなみにパンを主食とする諸外国のパンは黒パンやライ麦パンなどを思い浮かべていただければわかるように、真っ白なパンではありません。重さもあり、かみ応えがあります。ちなみに日本の白いパンはかみ応えがないため、十分に唾液が出ないため、のどの通りが悪く、そのためバターやマーガリンといった「油」を塗ってあげないと食べづらくなります。

話が少しそれました。日本食は薄味が多く、素材の味が出ますので、へたな素材を使うとまずくて食べられません。それに対して「油」を使うと素材の悪さをごまかす事ができます。つまり、油は粗悪な食材を美味しく変えてしまう魔法の調味料なのです。

私は魚釣りをしますが、鯛が連れたときは、塩焼きにして食べることがおおいです。油を使いませんので、食材の味がよくわかります。私の子供は新鮮な魚を食べつけているせいか(とはいってもそんなしょっちゅう大物が釣れる訳ではないのですが)、例えば養殖の鯛の塩焼きが出ても、いっさい箸をつけません。子供ははっきりしています。もったいないので、私や家内が食べることになります。

もちろん油や砂糖を全て否定しているのではありません。現代人は意識しないと摂取過多になっていますので、少し減らす意識を持って丁度良いくらいになるということです。

また、子ども、20代、30代くらいまでは、体の方に対応力があり、活動する機会も多いのでまだ良いのですが、その食習慣をそのまま引きずって40代に入る頃から色々な症状が表面化してきます。有名人でも癌や突然死などが報道されるのがこの年代からでしょう。私もその年代に突入してしまいました。何かとお付き合いも多くなり、お酒の機会も多くなりましたので、つまみの頼み方にも少し気を使っています。飲んだ後のラーメンは、ここ数年やめました。

人間は植物と違い、他の命をいただかないと生きてはいけません。食は生命の根源に係わる問題です。それは多分私があえて言わなくても皆さんが大なり小なり気付いているところでしょう。仕事や様々な事情で3食、理想的に採れる方はそう多くはないと思います。では、今ある環境の中でどうすればよいか、今後、自分が実行している事も含めまして、提案していきたいと思います。長く実行できなければ意味がありませんので。

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2006年1月24日 (火)

第10回日本咬合学会に参加してきました

1月21,22日の二日間、東京で開催された第10回日本咬合学会に参加してきました。熊本を出たときは天気だったのですが、東京に近づくにつれて雲が厚くなり、飛行機も結構揺れてやっと羽田に降りたと思ったら、一面に雪景色でビックリしました。夜までボタン雪が降り続き、道路もズルズルでやっとの思いで会場に到着いたしました。

日本咬合学会は開業医で構成される団体で、詳しくはホームページを見ていただければ解りますが、私がよくこのブログで書きます、かみ合わせを正しくする事によって、歯科に限らず様々な病気が治るといった治療の研鑚を深める集まりです。

今回は「咬合と健康長寿」というテーマで、特別講演、課題講演、教育講演が行なわれました。21日は午後1時~6時半、22日は午前9時~午後4時半までほとんど休み時間も無く密度の濃い内容でした。日頃あまり頭を使っていないせいか、集中力を持続させるので精一杯でした。

なぜかみ合わせを治すと全身の様々な病気が治っていくのか、今までは結果論だけで述べられていた所がありました。そのため、西洋医学を心酔する方々からはエビデンスがないと批判され、場合によっては眉唾ものの治療だと言われる事も多々ありました。実際患者様はよくなって喜ばれていますので、それが最大のエビデンスだと思うのですが、どうも動物実験や検査値の上できちんとした結果が出ないと納得しない方々が多いようです。

ところが、今回講師にお招きした脳を研究されている方々の発表の中で、ファンクショナルMRIなどを使った研究により、体、特にそれをコントロールする中心である脳とかみ合わせとの関係が少しずつ解明されてきました。特に、北海道大学医学部教授の澤口俊之先生は、日本でも5本の指に入る世界的な脳のスペシャリストですが、ある出会いでこの治療を実際に受けられて、うつ傾向が吹っ飛び非常に元気になられてそれが現在も持続しているというご経験をお持ちなので、当学会でも毎回講演していただくのですが、ご多忙の中、本腰を入れてかみ合わせと脳の関係の研究に着手され、まだまだ始まったばかりですが、第1報として、非常に興味深い、よいデーターが出ていました。今後、必ずエビデンスができると確信し、心強く感じました。公演内容は非常にためになるものですので、追ってご紹介していきます。

今回は特別講演の中で学会と同じ「咀嚼と健康長寿」という演題でご講演いただいた、朝日大学名誉教授の船越正也先生の内容を記載させていただきます。

「咀嚼と健康長寿」                   朝日大学名誉教授 船越正也      現代日本人の死亡原因の上位を占めている癌、心筋梗塞、脳梗塞、感染性疾患、老衰には共通する一つの要因として、生活習慣、特に食習慣に過食、高カロリー摂取が認められる。この食習慣は肥満、高脂血症、動脈硬化、高血圧、心筋梗塞、脳梗塞、細胞癌化、細胞老化、死へと連鎖的に進行していく。このような連鎖反応の引き金を引くものはフリーラジカル(活性酸素群)であると考えられている。したがって、健康長寿の達成には肥満と活性酸素群の抑制が問題解決の鍵となる。

1.咀嚼と肥満予防                                           肥満の原因は、摂取カロリーが消費カロリーを上回っていることである。それゆえ肥満を防ぐには、栄養素の種類にかかわらず総摂取カロリーを消費カロリー以下に抑えなければならない。食欲をそそる美食が溢れている現在、食物摂取量を抑えるには、フレッチャー氏の完全咀嚼方法が推奨される。これは口に入れた食物を自然に食道に流れ込むまで充分に咀嚼する食事法である。食物の性状にもよるが、一口30回以上咀嚼していると口腔感覚刺激が視床下部に神経ヒスタミンを増加させ、満腹中枢を興奮させて早く満腹感が生じ、過食が予防されるので肥満を防ぐ事が出来る。また、既に肥満の者には減量効果が現れる。

2.咀嚼と抗酸化作用                                         従来、健康増進の基本として栄養、運動、休養の三者が挙げられてきたが、生活習慣病、免疫低下、発癌、老化などのメカニズムにおける活性酸素群の関与が明らかとなり、今日では栄養、運動、休養加えて生体の抗酸化作用を高める事が人間の健康長寿にとって不可欠の問題となってきた。活性酸素の発生を抑えたり、発生したものを捕捉除去する抗酸か物質としてカタラーゼ、ペルオキシターゼ、ラクトフェリンなどがあり、これらは唾液中にも含まれている。したがって良く咀嚼すると唾液分泌が亢進し上記の抗酸化物質も増加して活性酸素の害を抑制する事ができる。

3.咀嚼と健康長寿                                           抗酸化物質には上記の他にビタミンA,C,EやSODなどがあり、また細胞を増殖、成長させ、あるいは老化、死滅した細胞を再生補充するための核酸や口腔粘膜および病原菌の表面を被覆し、感染を予防するタンニンなど健康長寿に有効な物質を多く含む植物性食品が種種知られているが、これらの健康長寿食品も良く咀嚼することにより植物細胞から有効成分を引き出し体内に吸収利用する効率を高めることができる。このように咀嚼は健康長寿に貢献している。                   以上、抄録より

日本人の死因は高い順に、癌、心臓病、脳卒中、肺炎と続き、上位3つは完全咀嚼法によりかなり防げることがわかっています。歯になにかトラブルがあれば、当然しっかり噛む事はできません。また、しっかり噛む事は小食にもつながり、健康になれば医者にもかかる必要が無く、余分なクスリも飲まなくて良くなりますので医療費を減らす事もできます。当然、なにか器具を使うわけでもなく、ちょっと注意するだけで今すぐに始められるので誰でもいつでもできる事です。また、唾液中に含まれるパロチンという物質は不老長寿に大きく関係する物質と言われていますので、よく噛んで唾液がたくさん出るとパロチンも多く摂取できます。

ネズミの実験ですが、同じ内容の固形食と粉末食をそれぞれ与えて育てると、明らかに固形食を食べているネズミが長生きをします。つまりよく噛んだネズミが長生きしたということです。

日本人の寿命は世界1位を続けていますが、いくら長寿でも健康でなければその価値が半減します。ぜひ口の中を整えて名実ともに世界1位の長寿を保っていきたいものです。

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2006年1月18日 (水)

詰め物が欠けたりはずれたりするのは良い事です。

少々語弊を招くタイトルですが、その訳を詳しく説明していきたいと思います。

詰め物や被せ物がはずれる原因は、大きく2つに分けられます。一つはすき間から虫歯になってはずれる場合で、これは清掃不足から来るものがほとんどですので、皆様も納得しやすいでしょう。

もう一つは、歯に無理がかかった影響ではずれるというものです。これがタイトルに書いたもので、少し詳しくご説明していきたいと思います。

歯は決して同じ状態で口の中に存在しているのではなく、毎日微妙に動いています。例えば銀歯などがはずれてその日ならばすぐはまるものが、数日たつとはまりにくくなったり、入らなくなったりします。お口の中の詰め物は1ミリの何十~何百分の一の精度であわせていきますので、目では確認できないくらいの動きでも、大きな影響が出ます。例えば皆さんが髪の毛を噛んでもその厚みを感じられるでしょう。髪の毛の太さを考えてみて下さい。

以前も取り上げましたが、最近は歯ぎしりを持っている方が非常に多くなりました。食生活の変化(欧米化、軟食化)によるあごの退化により歯並びが悪くなり、そのひずみから来る場合も多いと思われますし、世の中がストレス過多の社会になってきた事もその要因でしょう。

歯ぎしりは、乾燥下(寝ている間は唾液の分泌が落ちて口の中が乾燥しやすくなります)ですべりが悪く、摩擦が大きい状態で、しかも意識が無いので力のセーブがきかず強大な力がかかるため、体内で一番硬い組織である歯牙も磨耗します。

その時、銀歯や合成樹脂の白い詰め物などは、当然硬さは歯牙と違うため、擦り減り方に差が出て段差ができ、そこから接着が破壊されて最後は脱離という状態になってしまいます。

患者様にとっては脱離は不快なものであり、場合によっては(ほとんどかもしれませんが)それを行なった歯医者は「腕がわるい」という烙印を押されてしまいます。多分私もその烙印を何度も押されている事でしょう。

では、もしものすごく強力な決してはずれない接着剤が存在したとして、それでしっかりとくっつけたらどうなるでしょうか。前述したように、歯の擦り減り方は材質によって違いますのでそのギャップは必ず出てきます。しかし、最強の接着剤によって決してはずれませんので、そのギャップは歯に残り、しかもどんどん大きくなってきます。すると、歯に対して異常な力がかかり始めます。しかもそれはある日急にくるのではなく、じわじわと増して来ます。

よくゆでカエルの話が例えに出されます。カエルを熱湯にいきなりつけると驚いて飛び上がり逃げますが、水に入れた状態でゆっくり加熱していくと、逃げ出すタイミングを失ってゆでカエルとなり死んでしまいます。歯も同じ事が当てはまるのではないでしょうか。徐々に強くなっていくかみ合わせに対して気付いた時には手遅れ、あるいは非常に厳しい状態という場面によく遭遇します。患者様に「もう少し早ければ・・・」というのは禁句ですので心の中でつぶやいています。

歯に不適切な力がかかると、歯を揺さぶるような作用をします。歯というものはその構造上、歯の軸に対して垂直な力には非常に強いのですが、斜めや横からの力にはもろい構造をしています。

私が歯を抜く時は、専用の道具で歯をしっかりつかんだら、ゆっくりゆさぶります。気長に続けているとだんだんゆるんできて、最後はスポッと抜けます。その様な力がはにかかってしまう訳です。

また、歯が揺さぶられると、歯を支えている骨が徐々に溶け出して、グラグラが強くなってきます。逆に、歯があんまり丈夫すぎると、今度はあごの関節にひずみがきて顎関節症になる場合があります。また、神経を治療した歯は脆くなるため、歯が割れてしまう事もあります。

ある時期にはずれたり脱離したりすれば、ほとんどの方はすぐ歯科医院にいかれると思います。その時点で、ズレやギャップを調整する事により、その歯の寿命は結果的に伸びる事になります。例え、きれいに入るのでそのままはめなおす時も、必ずかみ合わせのチェックと調整を再度行なってからやります。

人工物は壊れたら何度でもやりかえがききます。しかし、歯そのものが駄目になれば、いくらお金をかけても不可能になります。はずれたり欠けたりすることにより、歯が深刻なダメージを追う前に早期発見出きる事を考えると、もちろん頻繁にはずれるのは困りますが、問題が小さいうちに発見できるという意味では、一概に悪いとは言えないと思います。

さて、これを読んで、まだまだ歯医者の言い訳と思われるでしょうか?

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2006年1月16日 (月)

健康になる食事パート1(牛乳)

先週の土曜日、この記事をやっと書き上げてさあ送信と思ったらパソコンがフリーズして全く動かなくなり、泣く泣く強制終了をしたために全てがパーになり、その日はショックで書き直す気力がわきませんでした。本日気持ちを改めて書きます。

食育という言葉がありますが、今回から何度か「食」に着いて書きたいと思います。言うまでもなく、人間は植物のように自ら栄養を作り出す事ができませんので、他の命をいただいて生きていかなくてはいけません。それに対する感謝の念を常に持っておくように言われていましたが、最近はいかがえしょうか。以前は、例えばご飯を食べるときはお百姓さんに感謝し、1粒も残さず食べるようにしつけられました。おかげで、私も残すという事ができず、量にかかわらず、出された分だけ食べてしまいますので、家内にあまり量を出さないように言っているくらいです。

話は少しずれますが、コンビニなどの弁当は、賞味期限が印字してあり、その時間を越えると棚から引かれて処分されます。私の医院の横がコンビニで親しいので、時々賞味期限の切れたお弁当やケーキなどをいただく事があります。もちろん従業員と美味しくいただきます。お腹を壊すこともありません。全国のコンビニなどで同じようにして廃棄される食物が全体の3~4割あると聞きます。一方で世界では毎日たくさんの方が飢えでなくなっています。もちろんこれらを単純に結びつける事はできませんが、日本人は少し考えなければいけない所があるのではないかと思います。これから書いていく内容のキーワードは「粗食」です。

さて、牛乳の話題に戻ります。よく、宣伝で「牛乳は完全食なので毎日飲みましょう」とか、とあるスポーツ選手は子供の時、体を作るために毎日数リットル飲んでいたとかいう話を聞きます。果たして牛乳は本当に人間の体に良いのか考えてみましょう。ちなみに私は何年も牛乳を飲んでいません。好きではありませんが、飲めないとか嫌いという訳ではありません。だからといって不健康ではなく、少し太り気味を健康診断で指摘されますが、極めて健康です。

牛乳は文字通り牛の乳です。成分は当然人間の母乳とは異なります。よく、牛乳を飲むとお腹がごろごろいったり、下痢をしたりする方がいらっしゃいます。日本人は牛乳を消化する酵素を持っていない方が何割かいらっしゃるそうです。そにょうな方は、健康のためと我慢して飲むたびに苦しい思いをします。

一昔前、粉ミルクなどの人工乳は栄養をきちんと計算してあり、完全食品なので母乳を早く止めて人工乳に切り替えるような指導がされていた時代がありました。もちろん今もこれを信じている方はいらっしゃらないと思います。母乳で育てる事の大切さはまた改めて書きます。

日本人が牛乳を飲みだしたのは、歴史的にもつい最近の出来事だと思います。日本人の腸は欧米人に比べて長いそうです。これは、お米を主食とする農耕文化に適応した結果です。肉食動物に比べて草食動物はかなり長い腸をもっているのと似た様な状況でしょう。

つまり日本人は縄文、弥生時代からつい最近まで穀物から栄養を採って生活してきました。それが戦後数十年で急に欧米型に食生活が変化した影響が出てきています。これは私が取り上げるまでも無く、様々なメディアの報道で耳にされていると思います。

牛乳の主成分はタンパク質です。当然人間の母乳とは似て異なるタンパク質構成をしています。アトピーなどのアレルギーを起こす原因物質をアレルゲンと呼びますが、これもタンパク質が関与しています。つまり、子供の頃から牛乳という異質なタンパク質を採り続ける事により、体質が変わってアレルギーなどを起こしやすくなるという研究結果もあります。もちろん他にも環境汚染、食品添加物、などなど原因とされる要因はたくさんありますので、直接結びつけるのは少々強引かとは思いますが、確実にアレルギーという病気が増えてきているのは事実です。わたしの個人的見解では関係があるのではと思っております。

また、戦前戦後の食糧難の時代ならばいざしらず、現代の日本で栄養過多になる事はあっても栄養不足になる事は、ほとんど無いと思います。その中で、いくら牛乳がバランスの良い食品だといっても、それを健康のためとか義務のように飲む必要はないのではと思います。牛乳にはカロリーがありますので、飲めば空腹感が緩和され、その分食欲が落ちますので、大事な主食や副菜が入らなくなるという本末転倒が起ります。しかも、牛乳はバランスが良いので、それを飲んでいれば食事は残しても構わないだろうという誤解も生まれます。そして、食間にお菓子をたべるというさらなる悪循環が起ります。食事中の飲み物として子供に牛乳を出されているところも多いのではないでしょうか。

これらは食事をカロリーを中心として述べた理論であり、少し方手落ちではないかと思います。人間が必要とする栄養の中にはカロリーのほとんど無い微量なものや、多分まだわかっていないものもたくさんあると思います。それらは、やはり食物を採る事によって自然と補われるものだと思います。

カルシウムの補給源として牛乳を飲んでいる方もたくさんいらっしゃると思います。確かに牛乳の中には成分としてカルシウムが多く含まれていますが、牛乳のカルシウムの吸収率は意外と低く、思っているよりも体内に吸収されず素通りするものも多いようです。ちなみに海草などに含まれるカルシウムは良質で吸収されやすいそうです。昆布やワカメは日本食には欠かせないものですので、古来より食べられていたと推測されます。

私は牛乳は飲まないと書きましたが、物を残せない性格なので、よそで出されたらもちろんいただきますし、ヨーグルトはたまに食べますので、決して全否定しているわけではありません。今回は少々私の独断的意見(自分なりに色々な書物を読んだり、詳しい方に意見をお聞きしたものなのですが)になりました。後は皆様が自分の主体性を持って判断してみて下さい。その時代、常識と思われていたことが次の時代にひっくり返される事は歴史の上で数多くくり返されてきました。要は他人の意見に左右されず、自分の考えや、直感、感性などを信じる事も大切でしょう。

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2006年1月11日 (水)

歯のホワイトニング(続き)

今日は、少し寒さも一段落したような感じです。豪雪地帯では孤立したり亡くなった方もいらっしゃるようで、心よりお見舞い申し上げます。温かくなったらなったで、今度は雪崩や洪水の危険が出て来るそうで、十分お気をつけ下さい。

さて、年末少々更新をサボっておりましたので、ホワイトニングの話が途中になっておりましたので、その続きです。

ホワイトニングには、オフィスホワイトニングとホームホワイトニングの2種類があります。読んで字のごとく、オフィスは会社、つまり診療室で行なうもので、ホームは自宅で行なうものです。

オフィスホワイトニングは診療室で少し濃い目のホワイトニング剤を歯の表面に置き、一定の時間作用させて色を抜きます。たくさんの種類が発売されていますので、それぞれやり方が少しずつ違います。例えば、クスリを塗ってそのまま一定時間放置しておくものもありますし、クスリをより活性化させるために、強い光やレーザーなどをあてる物もあります。

濃度が濃い薬ですので、歯ぐきにも刺激が強いため、歯の境目の歯ぐきの部分は専用のお薬でガードします。また、通常ホワイトニングの操作を何回か繰り返すため、1回の治療時間がかなりかかり、我々も付きっきりで行ないますので、患者様も術者側も結構大変です。最近はクスリの改良も行なわれて、時間的なものは短縮されてきたようですが、かかられる歯科医院がどのクスリを使っているかによって、術式は変わります。

オフィスホワイトニングは濃い目の薬で一気に色を抜きますので、その副作用として強い歯のしみが出ることが多いようです。これは一時的なもので、歯が悪くなったというわけではなく、しばらくしたら自然に治るものなのですが、患者様によっては嫌う方もいらしゃいます。特に今のような冬場は水も冷たく、避けた方が無難な場合もあるでしょう。最近は、最初からしみ止めを配合したものも出てきたようですので、詳しくはかかりつけの先生にお尋ねください。

オフィスホワイトニングで確かに歯は白くなるのですが、短時間で一気に行うため、白さがどちらかと言うとすりガラスのような、少々透明感の少ない白っぽい色になりがちです。そのため、その上から特殊なクスリでコーティングするような方法もありますが、色のきれいさと言う点からは、ホームホワイトニングの方に部があるような気が私はします。

それに対してホームホワイトニングは家庭で自分で操作を行なっていただきます。と言うと難しそうに聞こえますがそうではありません。具体的に書きますと、まず歯科医院で歯型を採り、その上でホワイトニング用のトレーを作ります。透明なマウスピースのようなものです。それを患者様にお渡しして、その中にホワイトニング剤を自分で入れていただき、数時間装着します。それを2~4週間くらい続けていただきますと、歯が白くなってきます。オフィスホワイトニングに比べて濃度の薄い薬でじっくり行ないますので、非常にきれいに色が抜けます。

ホームホワイトニングでもやはり歯のしみが出ることがあります。その場合は、1,2日中断していただくと元に戻りますので、それからまた継続していただきます。要は積算時間ですので、期間が多少長くなるものの、効果には影響はありません。

私はホームホワイトニングのみを行なっています。医院によっては、オフィスを行なったり、両方を併用しているところもあります。実際に行なった患者様の感想をお聞きすると、見た目だけでなく、性格まで明るくなったと言う方が結構いらっしゃいます。

日本人は写真に写るとき、ほとんどの方が口を閉じで歯を見せないように写ります。対して外人は、これでもかと言うくらい歯が見えるようなスマイルで写ります。確かに彼らの歯は並びもよく、真っ白は歯をしています。

歯並びは矯正や補綴が必要になりますので、時間や費用もかかりますが、このホワイトニングは本当に簡単にできますし、費用も保険は効きませんが、少し前に比べるとかなり下がってきました。皆さんもきれいにホワイトニングされた歯で最高のスマイルを手に入れませんか。

ちなみに、ホワイトニングは永久的なものではありません。何年かするとまた色は着いてきます。特にコーヒー、紅茶、お茶、ワイン、コーラなどなど、色の強い飲み物や、カレーなどの色の強い食べ物を好む方は色の着き方が早いです。しかし、その場合はまたホワイトニングに行くと、最初の時よりも短期間でまたきれいにする事ができます。定期的に美容院に行くような感覚でホワイトニングに通われる方もいらっしゃいます。

真っ白な歯がのぞく最高のスマイルに値段をつけると果たしていくらになるのでしょうか?

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2006年1月 3日 (火)

あけましておめでとうございます。

謹んで新年のご挨拶を申し上げます。皆様どのようなお正月をお過ごしでしょうか?私は飲んで食っての典型的な寝正月気味です。5日から診療を始めますので、そろそろ頭を切り替えないといけないと思い、診療所に出てきて、このブログを書いております。

昨年は、私にとりましてこのブログを始めたのが大きな転機でした。専門知識をいかにわかりやすく伝えるか苦労しました。どれだけ伝わったかは疑問ですが、今年は写真などをうまく取り入れて、さらに見やすく解りやすい内容を目指して頑張ります。はっきり言って、私のブログは文字ばっかりで内容も硬く、正直、興味がある内容でなければ読みにくいと自覚しております。

今年は4月に医療保険と介護保険の同時改正が行なわれます。昨年の報道でも取り上げられましたが、医療費の削減もはっきり明示されました。高齢者の負担強化に加えて、歯科でどの部分が削られるか、詳しい内容はまだ出ていませんが、厳しい改正(改悪)が予想されます。

少々愚痴を言わせていただきますと、年々医療費が伸びていますが、そのほとんどは医科の高齢者医療の部分です。歯科はここの所ずっと横ばいで、ほとんど変わっていないのですが、医療費を削減される時は、必ず医科と同じ割合のカットを負担させられます。実態にそぐわない負担を押し付けられる現実を、ご理解いただければ幸いです。

昨年、いよいよ日本の人口が減少に転じました。今の出生率、政府の政策を考えると、移民でも受け入れない限り人口が増加に転じるのは難しいでしょう。さらに、2007年問題と言われる団塊の世代の方々がどんどん退職していくと、年金の負担や税収の減少で、ますます財源が厳しくなるのは誰の目にも明らかでしょう。

冗談抜きで、安易に医者にもかかれないという時代が目の前に迫っていると言っても過言ではありません。その中で、大切になって来るのは、私がいつも繰り返し提言している「健康は与えられものではなく、自分で努力して勝ち取るものである」という自覚を持って、自分の健康管理に自分で責任を持つと言う事です。

生活習慣病(昔の成人病)は、読んで字のごとく、生活習慣から起る病気です。先進国に蔓延する病気で、途上国には少ないものです。人間は私も含めて楽な方、贅沢な方に向かうのは簡単ですが、それ逆行するのはひじょうに強い意志の力を要します。それができないため、安易にクスリなどに頼っている日本人が非常に多く存在します。

基本的な、粗食、野菜中心の食事、適度な運動、十分な睡眠などを毎日続けるだけでもかなりの方の健康が回復すると私は思っております。神様は、人間をクスリ無しでは生きられないようには決して作られていないと思います。

以前も書きましたが、健康を維持、回復するために歯科が果たせる役割がかなりあることが最近の研究で解ってきました。医療の中で歯科だけが独立していますが、これは間違いで、歯科も体の一部ですので、その様な見方でこれからは考えていかないといけません。

今までずっと歯科と医科が平行して存在しているような状態が長かったので、急に方向転換しろと言われても、歯科医師のほとんどが、まだその様な考えを持っていないのが現状です。しかし、私も含めまして、その問題に気付いて何とかしようと考える歯科医師が全国に少しづつではありますが出てきましたので、多分時間とともに患者様にとってよい方向に向かっていくと信じています。

そのあたりを、今年もkのブログを通じてご紹介していきますので。時々のぞいてみて下さい。今年はホームページも製作する予定になっておりますので、完成しましたらそちらもご紹介いたします。

今年もよろしくお願いいたします。

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