インプラント治療の考え方その1
インプラントという言葉を皆様も一度は聞かれたことがあるのではないでしょうか。少し前までは、特殊な治療でごく一部の歯科医院で行われていた治療でしたが、今は術式も確立され、使用材料もある程度淘汰されて、一般の歯科医院でもかなり行なわれるようになりました。
インプラントとは、簡単に言うと、何らかの原因で歯を抜いた後、その欠損部の骨にインプラントを殖立することによって、そこにまた新しい歯が生えた様な状態になり、かみ合わせなどの機能的な面と、見た目の審美的な面を回復することができます。「乳歯、永久歯に続く第3の歯」と呼ばれる由縁です。
欠損部を放置すると、様々な弊害が出てきますので、何らかの方法で歯を作ります。インプラント治療が選択できない場合は、ブリッジが入れ歯で作製します。
ブリッジとは文字通り「橋」の意味で、抜けた歯の前後の歯を必要な本数削って抜けた所に人工的な歯を作り、すべてを連結してセメントで歯に接着します。そのため入れ歯に比べて取り外しをして清掃などする必要がなく、なじめば自分の歯とほとんど感覚的には変わらなくなりますので噛みやすく快適です。少数歯欠損の場合はほとんどの方がこの治療法を選択されます。ただ、抜けている歯が多くなると作製できない場合もあります。また、歯が抜けた部分にかかる余分な力も前後の歯にかかってきますので、過超負担になると咬む力を支えきれずに前後の歯まで共倒れという場合もあります。特に、すき間が2本分以上あると、予後は極端に悪くなる傾向があります。それは、噛むたびにブリッジがたわむため、そのひずみが蓄積してトラブルの原因になります。
また、ブリッジの場合、前後の歯を削るという処置が必要になります。既に銀歯などが入っている場合は、それをはずせばよいのですが、虫歯も何もないきれいな歯であってもかなりの量を削らなければいけません。削った歯から悪くなるという経験をされた方も多いと思います。どんなに精密に作られた補綴物(かぶせ物)であっても、歯とのすき間をゼロにすることは不可能です。腕の悪い(?)ドクターの治療だと、素人の目でもあきらかに解るくらいのすき間が見える事もあります。虫歯の原因となる細菌からすると、余裕で入り込める大きさの隙間なので、そこで繁殖すると新たな虫歯の発生原因となります。つまり、歯はなるべく削らない方がよいということです。私の医院では、初期の虫歯は予防のご指導を行なって経過観察する場合が多いです。もちろん放置してひどくなると逆に歯を傷める事になりますので、定期的に観察させて進行していないか確認させていただくようにはしています。
また、保険診療の場合、前歯は白い歯を入れることができるのですが、前から4番目以後の臼歯部は銀歯になります。これをいやがる方も結構多くいらっしゃいます。保険診療はルールがありますので、仕方がありません。
ブリッジの平均残存年数は約10年という統計が出ています。2本以上の欠損があると、もっと短くなると思われます。つまり、10年以内には、作り変えも含めた再治療が必要となるという事です。当然、再治療の時には以前よりも残っている歯は傷んでいますので、仮に同じ様な設計で再製作ができたとしても、その寿命は前回製作した時よりも短くなるのは仕方ないでしょう。そうこうしているうちに、歯がもたなくなり抜歯となり、だんだん歯が少なくなり、最後は総入れ歯への道をまっしぐらです。しかも。このスピードは、歯が少なくなるほど残っている歯の負担が大きくなりますので、加速していきます。
では、入れ歯はどうかといいますと、入れ歯にも当然長所、短所があります。長所としましては、歯の欠損が何本になっても製作可能だということです。ブリッジで対応できるような少数歯欠損であっても、入れ歯で当然作製可能です。歯を削る事をいやがる患者様は、入れ歯にされる事もあります。入れ歯の場合は残っている歯にバネのようなもので(クラスプと言います)安定させますので、その部分を少しだけ削って形態修正をすることはありますが、ほとんど残っている歯を削らなくて良いというメリットはあります。ただ、入れ歯の最大の欠点(利点である場合もあるのですが)は、取り外しであることです。残っているはとの間にはどうしてもすき間ができるので、できれば毎食後、最低でも1日1回は口の中から取り外して、残っている歯の他に入れ歯の手入れが必要になります。これをサボると歯ぐきの炎症や口臭、残っている歯の虫歯の原因などになります。
また、入れ歯は軟らかい歯ぐきの上に乗っていますので、咬む力を歯ぐきで支えます。そのため、なるべく大きく作った方が、力を負担する面積が大きくなりますので入れ歯としては有利になります。ただ、大きくなるほど違和感が強くなりますので、妥協点を見つけなければいけません。硬いものや引っ付くものが苦手で、どんなに名人が作ったとしても、自分の歯の3分の1くらいしか噛めないと言われています。
前述したように、入れ歯は残っている歯バネでに引っ掛けますので、その周りに特に汚れが溜まりやすく、虫歯を誘発しやすくなります。また、入れ歯は噛むたびに微妙に動きますので、バネをかけた歯を揺さぶるため、その歯の骨が吸収して最後は抜けてしまうという事もおあります。いればの方は、「バネをかけた歯から悪くなる」という経験をよくされます。また、どうしても自分の歯の方が噛みやすいため、片側噛みから顎のズレなどにつながる事もあります。
これらをインプラント治療である程度解決する事ができます。長くなりましたので、インプラントについては次回触れます。
| 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)
最近のコメント