4月から医療費が変わります
咀嚼運動のまとめを書かなければいけないのですが、明日(4月1日)から医療保険の改正(悪?)が行なわれます。我々医療者側には非常に厳しく、煩雑な改正となりました。その対応に追われてなかなかこちらまで手が回りません。すいません。
以前も書きましたが、医療費の高騰で保険財政がパンクすると言われています。そのため、今回もマイナス改訂になっているわけですが、実は医療費が伸びているのは医科の老人医療の分野であって、歯科はここ 10年くらいを見てもほとんど横ばいの状態です。しかし、医療費改正の時は必ず医科と同じ割合の削減を強いられます。この不条理さを一般の方にもぜひわかっていただきたいと思います。
歯科は診断がついた後、ほとんどの場合何らかの処置が伴います。投薬だけで治るものはほとんどありません。つまり、歯科の治療費はそのほとんどが技術料と歯を作る時の材料代で占められています。その割りに、日本の歯科の技術料は非常に低く見積もられています。諸外国の歯科の治療費を聞かれると、たぶんみなさんビックリされると思います。そのせいもあって、外国では歯を悪くいしないように予防が進んでいるという側面もあります。
しかも、今回は点数削減に加えて、やたらとカルテや患者様向けの文書発行など膨大なデスクワークを義務化されました。厚生省が要求するとおりにきちんとやるためには、我々の仕事の多分6~7割はカルテや書類書きに割かなければいけなくなると思います。これは、果たして患者様の方を向いた改正と言えるのでしょうか?
本来、私も含めて医師と名のつく者は、患者様を良くする為に最大限の知識や技術、機材、薬なども含めて総動員して治療にあたりたいと思っています。しかし、保険には細かいルールが決められており、たくさんの制約を受ける事になります。例えば外国でたくさん使われて高い効果を上げている薬なども、厚生省の認可がなければ使用することはできません。それだけ実績のあるクスリや材料であっても認可を受けるためには長い年月や費用、手続きなどがあります。まさに官僚機構の弊害だと言わざるを得ません。
さらに、今回ジェネリック医薬品を優先的に使用するように通達が来ました。最近テレビなどでも宣伝されていますので、「ジェネリック医薬品」という言葉を聞かれたことがある方も多いと思います。これは、何かと言いますと、クスリを開発するためにメーカーは膨大な費用がかかります。研究、開発、動物実験、臨床治験などを経て厚生省に認可されてはじめて新薬として販売されます。開発を始めてから10年前後の期間がかかるのではないでしょうか。それだけの投資をした見返りとして、開発メーカーのはある一定期間のその薬に対する特許のようなものが認められます。その期間が過ぎると、他のメーカーも同じクスリを製造販売できるようになります。当然既にあるクスリをまねて作るわけですから、余分な費用がかかりませんので、安くできます。
宣伝で「クスリ代が安くなります」という理由がここにあります。確かに、慢性疾患で飲み続けなければいけないクスリなどはジェネリックを使うメリットは大きいと思います。私も歯科でよく出す鎮痛剤はジェネリックを使っています。
では、感染症にかかった場合に処方される抗菌剤はどうでしょうか?ジェネリックが発売されるのは前述したようにある一定期間を過ぎてからになります。細菌と抗菌剤のしのぎあいには厳しいものがあり、細菌もクスリに対してだんだん「耐性」と言うものを獲得してきます。つまり、抗菌剤がだんだん効かなくなるということです。当然、古いクスリほど耐性菌が多くなり効かなくなります。その様な場合は、やはり最新のクスリで一気にたたくのが一番効果的です。場合によってはジェネリックのような古い(製品が古いのではなく、開発された時期が古いという意味です)クスリを使うと、治るものも治らず、いたずらに治療期間を長くしてしまう場合もあります。つまり、何でもかんでもジェネリックと言うのは間違いではないかと思います。
ちなみに、歯科では最初から効果の高い強いクスリを出すと指導を受けます。医科では当たり前のように最初から出される薬が歯科ではダメといわれます。そのため、あまり効き目のないクスリをだらだら出すため、耐性菌の発現を助長していると医科から指摘される事があります。皆さんは、この矛盾をどう考えられるでしょうか?我々も最初から効き目の高いクスリを出して1日も早く患者様を苦痛から解放したいと思っているのに、それができない状況なのです。苦情はぜひ厚生労働省までお願いいたします。
だんだん愚痴っぽくなってきましたので、そろそろやめますが、厚生省の役人の方々には医者は何のために存在するのか、その原点をもう一度考えていただきたいと切に思います。もちろん最低限の書類記載は必要だと思いますが、そちらが仕事の大半を占めてくるような現状は本末転倒ではないかと感じるのは私だけでしょうか?
ともかく、新しいルールをしっかり理解して実践するにはもう少し時間がかかりますので、そちらが一段落しましたら、また楽しくためになるブログにしますので、しばし猶予をいただきます。
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