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2006年4月25日 (火)

この国の行く末は・・・

ここの所、連日青少年が引き起こす凶悪犯罪がテレビや新聞などをにぎわしています。犯罪の内容がアメリカ的になったとも言えるでしょう。アメリカのように銃の携帯が許可されれば、犯罪の面で言えば、まさに第二のアメリカが出来上がるでしょう。

最近の傾向として、犯罪を犯した人の周りの評判を聞くと「普通の人」「いい人」というパターンが圧倒的に多いということです。ここに、怖さが隠れています。極端に言えば目の前にいる普通の人が、ある日突然凶悪な犯罪を犯す可能性があり、それを予測する事が非常に難しいからです。

ニュースなどの解説を見ていると、教育の問題や家庭の問題、社会の問題などが盛んに論じられています。確かに環境が人間に与える影響は非常に大きいものがあると思います。しかし、私の目から見ると、そこに大切な問題が抜け落ちているように感じられます。それは「体」の問題です。

私は歯科医師ですので、どうしても口の中に目が行きます。私が今、テーマとして扱っている「かみ合わせと全身健康の関連」という点に、ぜひとも注目していただきたいと思います。

子供さんがおられる方は、ぜひ柱などの地面に垂直になる線の前に立たせてみて下さい。(今流行の?欠陥住宅で床が傾いている方は、ひもに何でもいいですのでおもり代わりにつるしてその前に立ってみて下さい。この方がより正確です)もちろんご自分も姿が写る大き目の鏡の前に立って自分を客観的に眺めてみて下さい。

一番わかりやすいのは、頭の傾き、肩のラインの傾き、両手の指先の位置などです。驚くほど体が歪んでいないでしょうか?私が見る限り、今の子供たちは言い方は悪いですがぐにゃぐにゃの状態です。これが、かみ合わせの不調和から来る事が多いということを、どのくらいの方が認識されているでしょうか?お医者さんもよく認識されていないというのが現実です。

このような姿勢だと当然背骨などが曲がってくるのは当たり前です。これに病名をつけると「脊柱側湾症」ということになるのでしょう。一時期、これを治すために矯正器具のようなものを装着する治療があったそうです。さしずめ、マンガの巨人の星に出てくる「大リーグボール養成ギブス」の様なもので、強制的にゆがみをとるというものです。これは想像するに、かなりの苦痛を患者様に与えるものでしょう。

背骨は1本の硬い骨ではなく、小さい骨が連なってできていますので、割と簡単に矯正できるかもしれません。しかし、装具をはずせばたぶん短い期間に元の状態に戻ると思います。それは、背骨が歪んだのは、そうしないと今の状況に適応できないから必然的にそうならざるを得なかった結果であり、決して背骨だけの問題ではないからです。

以前も書きましたが、下顎は体のバランスを保つのに非常に大切な役割をしている事は意外と知られていません。耳の三半規管は有名ですので、目まいがすると耳鼻科に行かれる方が大半だと思いますが、実は下顎もその様な働きを持っています。

試しに立って目を閉じて、体を十分リラックスさせた上で下顎を前とか横とかに大きく動かしてみて下さい。姿勢が微妙に変化する事を体感されるでしょう。下顎のズレ、つまり体に対するかみ合わせのズレ(この場合、上顎と下顎のズレではありません。見かけ上、歯並びが良さそうに見えても体に対しては大きくずれている方はたくさんいらっしゃいます)が姿勢のずれにつながる事がご理解いただけたでしょうか。

顎がずれると姿勢が変わります。そのままだと体が倒れてしまいますので、まず頭を傾けてバランスをとります。その傾きを今度は肩をずらして補正します。その肩のズレを腰でまた補正します。そのズレをひざ、それを足の裏と体全体で補正しますので、体が前述したようにぐにゃぐにゃになってしまいます。

首の痛み、肩こり、腰痛、ひざの痛み、足の痛みなどがかみ合わせの不調和からくる事が解られるでしょう。また、頭痛も顎の筋肉が頭につながっていますので、その筋痛を頭痛として感じる事がよくあります。この様な症状で歯科を訪れる方はほとんどいらっしゃらないと思いますが、実はかなりの部分を占めているのではないかと感じます。検査しても特に悪くないのにすっきりしないという方は、かみ合わせのチェックをお勧めします。

話がずれました。今の子ども達の口の中を診ると、軟食による咬む力のトレーニング不足により、顎の成長に際して適切な刺激が加わらないため成長不足になります。すると歯がうまく並びきれずに歯並びが、がたがたになり、結果かみ合わせのズレや、下顎のズレを引き起こします。それが姿勢のゆがみにつながっていきます。その他に生活習慣も大きく作用するのですが、ここでは省きます。

体のゆがみの中で、特に注意しなければいけないのが首のゆがみです。首の骨の中には、脳に栄養を送る大切な血管が通っています。首が歪むとその血管を圧迫する事になり、脳に行く血流が減少し、脳が慢性的な虚血状態に陥ります。脳は全てをコントロールする中枢ですので、その影響が体のあちこちに波及していきます。

例えば免疫系に影響すると、免疫力の低下を及ぼし、アレルギー疾患の増加につながります。今の子ども達の花粉症やアレルギー疾患の数は、一昔前に比べると驚異的な増加をしています。もちろん大人も似たような傾向です。

精神的な部分に影響すると、うつ、引きこもり、ニート、パニック症候群など、昔はあまりお目にかかることのなかった症状を引き起こします。小学生から既にうつ患者がいるこの現実を皆様はどう感じられるでしょうか?私はもうすぐ42になりますが、私が小学生の頃を思い起こしてみると、毎日友人とクラブ活動をしたり、遊びまわったりして、うつ状態に陥るなど考えられませんでした。まわりを見ても、おとなしい子は確かにいましたが、うつとは少々違ったと思います。

つまり、結論を申しますと、突然きれたりする子供は、環境の影響もありますが、実は体の方がそうならざるを得ない所まで追い込まれていたのではないかと私は思います。脳が虚血状態で、いつもすっきりせず何かもやもや、イライラしていて、何かのはずみでそれが爆発するのでしょう。今の子ども達のかみ合わせや姿勢を見ていると、その予備軍が無限にいるような気がしてぞっとしてしまいます。

少年犯罪を犯した人のかみ合わせ、姿勢の状態などを綿密に調査したら何らかの結論が得られるような気がしてなりません。もちろんそれは今のところ、不可能でしょう。まさかかみ合わせと姿勢、犯罪心理が関係しているなどと認識している方はほとんどいないでしょうから。

体の問題で、犯罪につながってしまったとすると、多少ですが同情の余地があるのかもしれません。また、その予備軍を適切に治療する事によって、犯罪の発生を未然に防ぐ事もできるのかもしれません。

もう一つ、犯罪と食の関係も書きたかったのですが、また次の機会にゆずります。

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2006年4月21日 (金)

舌をみがいていますか?

歯磨きは、ほとんどの方が毎日されると思います。では、舌をみがかれる方はどの位、いらっしゃるでしょうか?

患者様に歯磨きの指導をする時に、「舌もみがきましょう」とご指導すると、たいていの方が驚かれます。いままでやった事がないという方が大半です。まだまだ舌をみがくという習慣は一般化していないようです。

では、なぜ舌をみがく必要があるのでしょうか?それは、口臭の原因になるからです。鏡に向かって舌をベーッと出してみて下さい。先端部は常に歯に触っていますので、そうでもないですが、真ん中から付け根あたりに白っぽく付着しているものがないでしょうか。爪の先などでこすってみると取れてきます。それが舌苔(ぜったい)と呼ばれるものです。

これは何かと言いますと、主に口腔粘膜から剥げ落ちた細胞(皮膚の垢と同じ)と細菌からできています。舌苔中では、細胞1個に100個くらいの細菌が付着して細胞を分解します。その際、揮発性硫黄化合物(硫化水素など)を作りますが、これが口臭の原因となります。

ただし、舌では口臭の約60%以上が産生され、残りは他の部位で作られますので、舌の掃除だけで口臭が完全に消えるわけではありません。口臭を防ぐには、舌清掃に加えて丁寧なブラッシング、デンタルフロスや歯間ブラシといった補助器具の使用、定期的な歯石除去、そしてきちんと食事をとる事が重要です。食物が口の中を清掃してくれるからです。朝起きた時が一番口臭が強いので、朝食抜きはいけません。

舌の清掃器具には、舌ベラと舌ブラシの2種類がありますが、実験的には舌ブラシの方が効果があります。ただし、舌のい掃除に歯ブラシなどブラシの硬い製品を使うのは避けてください。数回のブラッシングで目に見えない傷を作ります。傷はデリケートな舌には大敵です。使い方は歯科医師や歯科衛生士にきちんと習いましょう。

口臭の約60%を占める舌苔にほとんどの方が注目していなかったのではないでしょうか。口臭は決して自分ではわかりません。かといって、夫婦や親子、恋人同士でも、相手の口臭を指摘するのはなかなか難しいと思います。しかし、相手に対する自分の印象を悪くしているのは間違いないと思います。

特に、虫歯を放置したり、歯槽膿漏が進行している方の口臭は強烈です。言い方が悪いですが、本当に「ドブ」の様な臭いがします。成分が似通っています。私も前の晩、飲みすぎて少々二日酔い気味で診療に出た時、鼓のような臭いに遭遇すると目まいがしそうになります。

エチケットの一つとして、今日から口臭予防で舌みがきも習慣化してみて下さい。口臭が気になる方は、測定器を置いている歯科医院や、口臭を専門にあつかっている医院もありますので、ぜひ一度足を運んでみてください。

ちなみに、「自臭症」と言って、ぜんぜん口臭がないのに自分では口臭があると思い込んで精神的に参ってしまう方もたまにいらっしゃいますので、機械で客観的に評価すると安心されるでしょう。

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2006年4月15日 (土)

咀嚼運動とは(まとめ)

咀嚼運動のまとめが残っていましたので書きます。

我々が物を食べる時は、特に意識する事もなく自然に咀嚼運動を行なって食事を行なっています。つまり、無意識で行なわれる(意識的にも行なえますが)反射運動とも言えます。

以前も書きましたが、患者様は歯の治療をして詰め物や被せ物をする時、当然よく噛めるものを入れてもらっていると思われるでしょうし、それは当然だとも思われるでしょう。しかし、咀嚼運動はお口の中に食べ物が入って初めて行なわれるもので、決して意識的に行なえるものではありません。そのため、お口の中で調整を行なう時、咀嚼運動に合わせて調整しようと思っても、実は不可能なのです。

では、咀嚼運動をどのように測るかと言いますと、やはりそれ専用の機械を用いて行ないます。私が使用しているのは「シロナソグラフ」というコンピューターを使った機械で、ガムを噛んでもらいながら下顎の動きを3次元的に測定していきます。その結果を見ながら、専用の咬合器(歯を作る時に用いる機材)で歯の模型を見ながらさらに分析し、製作していきます。

シロナソグラフは、国産の高級車1台分くらいしますので、私も有り金全部かき集めて、泣く泣くやっと購入しました。これがなければ咀嚼運動を計る事ができませんので仕方がありません。

理想的な咀嚼運動は、個人差なくほぼ同じ様な動きをすることが研究で解っています。これが一人一人違うとなると、治療も非常にややこしくなるのですが、ほぼ同じになると解っていると、ある程度理想的に作製して、個々に合わせて微調整すればよくなります。

しかし、ここで一つの問題が出てきます。全ての歯を治療する場合はそれが可能ですが、1,2本の少数歯を治療するとなると、どうしても残っている歯の制約を受けてしまいます。1,2本だけで理想的な咀嚼運動を再現する事は不可能です。逆にいえば、理想的な咀嚼運動を再現しようと思えば、お口の中全体を一つの単位と考えた、全顎的な治療が必要となります。

ズレが少ない方は、かみ合わせの微調整で済む場合もありますが、ずれが大きい方はかみ合わせを作っていかなければいけませんので、場合によっては虫歯も何もない歯を多少削って被せ物をしなければいけない場合もあります。さらにズレが大きいと、矯正治療が必要になる場合もあります。

一見、きれいな歯並びをしている方でも咀嚼運動が乱れている方はたくさんいますし、その逆もあります。もちろん、歯並びが悪ければ、さらに咀嚼運動の不調和は出やすくなるでしょう。

矯正治療を受けた方など、一見非常にきれいに並んでいるのですが、全く噛めていないという場合もかなりあります。あまり書くと矯正の先生に角がたちますので控えますが、矯正治療後に体調を崩している方が非常にたくさんいらっしゃるというのも現実です。

理想的な咀嚼運動を邪魔する歯があると、人間は適応力でそれを無意識に避けるようになります。その結果、よくない運動が定着します。例えば、片足にけがや捻挫などをすると、それをかばうような不自然な歩き方になります。その時点では、そうしないと歩けない訳ですので状態に適応していると言えます。もちろんバランスやリズムは崩れていますので理想的な歩き方からはかけ離れていますので、それがあまり続くと筋肉痛などの別の問題が生じる場合もあります。

咀嚼運動も同じで、無意識のうちに邪魔する場所を避けるような動きが定着します。歯は、けがのように短期間に治癒するような状態の変化は少ないですので、そのパターンはかなり体にしみこんでいます。しかし、脳の中には理想的な咀嚼運動パターンがインプットされていますので、たまにその運動が出てきます。すると、当然どこかに強く当たったりする場所がでてきます。毎回ではありませんが、そのストレスが蓄積していくと、ある特定の歯を支えている骨が溶けたり、修復物が何度作ってもはずれたり壊れたり、あるいは歯が丈夫な方は顎の関節に無理が来たりします。歯周病や歯ぎしりのせいにされている疾患の中には、実はこの咀嚼運動の不調和が原因となっているものが、実はかなりあるのではないかと思われます。

私もここ3年程咀嚼運動を懸命に勉強しているのですが、非常に奥が深く、まだまだ道半ばです。研修会に参加するたびに、いくつも新しい発見や気付きを得られます。私の師匠はよく「全国の歯医者は患者様を騙している。それは本当に良く噛める歯を作っていないからだ」という旨の事を言われます。厳しい表現ですが、事実だけに胸にグサッときます。

理想的な咀嚼運動は体全体にいかに良い影響を与えるかは私も何度も書いてきました。歯科が全身の健康に寄与できる部分がこれからますます広がっていくのではないかと思います。まだまだ認知度が低いですが、私もこのブログを通して1人でも多くの方に知っていただき、その恩恵を受けていただきたいと思います。我々専門家でもなかなか理解しずらい部分がありますので、なにかわかりにくい所がありましたら、どしどし質問してください。

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2006年4月10日 (月)

良い医者とは?

医療費改正(悪?)への対応も何とか一段落いたしました。しばらく更新をサボっていましたが、今週から従来のペースに戻していきたいと思います。

いま、ニュースでは、とある医療機関の「安楽死、尊厳死」に対する話題で持ちきりです。ドクターの責任が問われていますが、賛否両論様々な議論が交わされています。この類のニュースでそのドクターの評判を患者様に聞くと、ほとんどの場合が「評判の良い先生だった」ということになります。

私の推測ですが、多分この先生は患者様本人をはじめ、介護する家族の辛さを見るに見かねてあのような結論に達して手をくだしたのだと思います。今回も対象となったとある家族からは口頭ではありますが、同意があったと後に文章を掲示されました。

非常にデリケートな問題ですので、皆様もそれぞれご自分のお考えをお持ちだと思いますので、ここでは個人的なコメントは避けますが、治る見込みがなく、徐々に衰弱して最後は死に至ることが判っているとき、どこまでの医療措置を施すかは非常に難しい問題だと思います。ある番組で言っていましたが、延命装置をつけた瞬間から、それは誰にもはずす事ができなくなるということでした。もちろん、それを止めればその人が今回のように殺人罪に問われるからです。

友人の医者に聞くと、入院当初こそ家族、親類、友人などなど入れ替わり立ち代りお見舞いに来られますが、機械に生かされており状態も日々ほとんど変わらず、意識も無くて呼びかけにも反応が無いとなると、月日が経つごとに病室を訪れる人もまばらになり、場合によっては家族も顔をみせなくなる場合も多々あると言う事です。これは決してきれい事を並べて済む問題ではありません。当事者の精神的、肉体的、金銭的負担は決して他人には解らない事です。

私も数年前に祖父を無くしましたが、老衰ではありますが最後のある期間は意識も無く呼びかけにも反応しない状態でした。呼吸こそ自分で行なっていましたが、当然食事はできませんので鼻から胃にチューブを通して定期的にそこから栄養剤を注入するという状態でした。警察あがりで厳格な祖父でしたので、体も丈夫で自己管理もしっかりしていましたので、その分心臓なども強かったのでしょう。数回危篤で親類が集められる事がありましたがその都度持ち直していました。もちろんその時は良かったと思うのですが、気持ちが一段落すると、先の見えない何とも言えない感じが沸いてきた事を思い出します。

時々お見舞いに行っていましたが、ある意味自分を納得させるためのプロセスだったのかなとも思います。医療の進歩は昔ならば助からなかった状態の患者様を救う事ができる様になりました。それは素晴らしい事なのですが、皮肉にも前述した様な今までになかった問題を作り出す事になりました。

今回の保険改定も、切迫する医療財政難に対するためのマイナス改定と言うのがもっとも大きな理由でした。2007年問題とも言われる団塊の世代と呼ばれる非常に多くの方々の高齢化が目の前に迫っています。少子化も相まって、保険財政の困窮は加速度を増して来るでしょう。その中で、非常に高い医療費のかかる終末医療をどうするかは本当に大切な問題です。

主題から少々離れてしまいました。元に戻します。患者様に「良い歯医者の条件」と言う主旨のアンケートをとると、上位に来るのが、「優しい、親切」「よく話を聞いてくれる」「痛くない」「自分の希望を聞いてくれる」「治療がうまい」「治療費が高くない」などと言う項目が並びます。金銭的な部分を除けばかなり主観的であるというのがわかります。

治療がうまいと言うのは、我々専門家が言う「治療技術が優れている」と言うのとは少し違って、「痛みを早く取ってくれた」とか「治療が痛くない」とか「治療が早い」と言うような所が判断の基準になっている場合が多いようです。

一昔前までは、治療は医者に任せるもので、患者は素人(失礼)なので口をはさまないというような風潮だったようですが、最近は本やネットなどで自分で情報を集めて医者任せにせず、主体的に治療に関わるという方向に変わってきたようです。

それ自体は大変良い事だと思いますし、ある程度その方向で進むべきだと思います。ただ最近ちょっと困る事は、症状に対してご自分で診断して治療方針まで決めてこられる方が結構増えてきたことです。私が色々と説明しても、聞く耳を持たれないどころか、何か私が違う事を言いくるめているように感じられる方もいらっしゃいます。

例えば、歯が痛い時、その原因をいくつくらい思いつかれるでしょうか。私は、頻度の高いものから稀なものまで10くらいはすぐに頭に浮かびます。その中から症状や検査結果を基に診断を下していきます。そこには今まで勉強してきた知識に経験が裏打ちされています。患者様の意見は十分尊重しますし、その診断が当たっている場合はもちろんその方向で治療を進めます。しかし、やはり専門家としての我々の意見にも耳を傾けていただきたいと思います。医者をうまく利用するのが一番上手なかかり方だと思います。

教育界が良い例です。何か問題が起こるごとに学校や教師を糾弾してきたために、今は問題を起こす子どもに対して腫れ物を触る様な扱いです。なるべく問題を起こさないまま早く卒業してもらおうという雰囲気が感じられます。もちろん体罰を肯定するわけではありませんが、教育を行なう上で必要な場合もありえると私は思います。私自身、子どもの頃はかなり悪かったので何度もたたかれましたが、それを恨む気持ちは全く残っていません。むしろ、そこまでやってくれた先生の方がより記憶に残っています。最近の、全て責任を他に転嫁する風潮が学校を今のように変えてしまいました。確かに問題を感じる教師も中にはいますが、家庭を含めた学校以外の責任もかなり大きいと思います。

医療界も教育界の後を追っているように感じられます。こちらが思ってもいないような所でクレームが出たり、こじれたら裁判沙汰になる事もあります。だから患者様の望み通りに治療をすることがトラブルを起こさないコツの様な風潮です。患者様としてみれば、自分の主張がかなりの部分で通りますので満足度は高いと思いますが、そこには医者の診断よりも患者様の希望が優先される、ある意味妥協の世界が広がります。場合によっては手遅れが生じたり、治るものも治らないという事も出てきます。極端に言えば、医者が診断をする必要が無いのならば、治療も医者が行なう必然性が無くなると言う事です。結局は患者様ご自身が損をするような気がするのですが・・・。

今はインフォームドコンセントという事がしきりに言われます。簡単に言うと、患者様の話によく耳を傾けて治療を行いましょうという事です。これは、あらためて言われなくても当たり前の事だと思います。ただ、今までは患者様の方が遠慮されて言いたい事も言えない様な雰囲気もあったかもしれませんので、そのあたりは我々医療者側がうまく歩み寄りましょうというのは重々理解できます。ただ、ややもするとそこで患者様への迎合になっている場合があり、その頻度が上がっているということです。

そのあたりをふまえて、患者様側も自分の体をゆだねる医者を探す必要があります。私も自分が勤務した医院以外で他の先生がどのような治療をされているかを見る機会はありませんので。特殊な治療を除いては、上手な先生を紹介してくれと言われても責任を持ってすることはできません。つまり、医者を選ぶのも自己責任で行なわなければいけないということです。

我々歯科界も、コンビニよりはるかに多い数の歯科医院がありますので、皆様の周りにもたくさんの歯科医院があると思います。選択肢はたくさんあるわけですから、自分に合う歯科医院を根気よく見つける努力も必要とされるでしょう。個々で歯科医院に望む事は違いますので、他の方が良いと誉めていても、自分に合うとは限りません。やはり自分で自分に合った医院をみつけるしかありません。

つまり、いい医者とは、万人に対してよい医者というわけではなく、自分にとって良い医者であるという事です。

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