キレイ好きが日本人を滅ぼす?
花粉症の方には憂鬱な季節がやってきました。街中ではマスクをしている人が目立ってきました。私自身は花粉症ではないので、その苦しみを実感する事はできませんが、端で見ているだけでも辛そうです。
現在の日本人には、アトピー性皮膚炎、気管支ぜんそく、花粉症などのいわゆるアレルギー性疾患が非常に増えています。
幼稚園、小学校、中学校の生徒たちのアトピー性皮膚炎、気管支ぜんそくは、10年前の2倍に達しているそうです。花粉症に至っては、実に5人に1人以上かかっています。アレルギー性疾患は、今や「国民病」と言われるようになりました。
しかし、このアレルギー性疾患は、実は40年前の日本にはほとんど無かった病気でした。わたしももうすぐ43歳になりますが、小学校の頃など、たしかに周りを見回してもアレルギーの子どもなどほとんどいなかったような気がします。
その原因として思い浮かぶのが、公害や農薬、食品添加物の影響や住環境の変化、食事の欧米化などがあります。確かにこれらも人体に大きな影響を与えていることは容易に想像できます。しかし、諸外国の中で似たような環境にあるにもかかわらず、日本ほどアレルギー疾患が蔓延している国はほとんどありません。すると、他にも原因がありそうです。
東京医科歯科大学の教授に藤田紘一郎先生という方がいらっしゃいます。この方は「寄生虫博士」として非常に有名な方で、たくさんの著作もありますし、講演会もされています。この先生がユニークな自説を展開されていますので、ご紹介いたします。
先生いわく、日本人は回虫などの寄生虫を体から徹底的に駆除し、私達を守ってくれている常在菌までも追放した「キレイ社会」を作ってしまった結果がアレルギー性疾患を増加させているそうです。
先生はインドネシアのカリマンタン島の子供たちを30年間観察しているそうです。そこの子供たちはうんちが流れている河で泳いだり遊んだりしているそうです。最初の頃はそんな事をしていると「彼らは必ず病気になる」と思ったそうですが、実際は日本の子供たちよりはるかに元気で、瞳は輝き、皮膚は黒光りしているそうです。そして、アレルギー疾患に苦しむ子どもがほとんどいないそうです。
では、その違いはどこにあるかというと、調べてみるとそこの子供達にはほぼ全員に回虫などの寄生虫が感染しているそうで、つまり「寄生虫がアレルギー反応を抑制している」という結論に達し、研究を重ねるに連れて確信を深めたそうです。
1950年までの日本人の回虫感染率は常に50%前後でした。つまり、日本人は回虫と共生して来たわけです。しかし、第2次世界大戦後、日本は国をあげて回虫撲滅運動を開始しました。その結果、回虫の感染率は1960年には20%を切り、1965年には5パーセント以下なりました。じつは、この1965年を境にアトピー性皮膚炎、気管支ぜんそく、花粉症などのアレルギー疾患が発症するようになってきました。
研究の結果、寄生虫からアレルギー反応を抑える物質を取り出すことに成功されたそうです。寄生虫の分泌、排出液中に存在するタンパク質がアレルギーを抑えていたそうです。
また、研究を進めると、寄生虫だけではなく、細菌やウイルスも人間に感染するとアレルギー反応を抑える事が明らかになってきました。
人間の体は決して無菌状態ではありません、常に常在菌というものが体の各所にいて、実はそれらに守られています。
皮膚には表皮ブドウ球菌など10種類の菌がいて、守ってくれています。女性の膣の中にはデーデルライン乳酸菌という菌がいて、免疫力をつけたりビタミンを合成したりしてくれています。また、腸内には皆様も良くご存知のビフィズス菌、乳酸菌、大腸菌、ウエルシュ菌などが様々な仕事をしてくれています。
ところが、今の日本社会は「抗菌グッズ」があふれています。テレビでは毎日のように「抗菌」「除菌」「消臭」のコマーシャルを流し続けています。いまやボールペンから下着に至るまで、抗菌をうたってて、抗菌グッズに触れずに生活する事は、ほぼ不可能になっています。
日本人は「洗いすぎ」です。洗うときれいになると思っていますが、実は洗いすぎると汚くなるのです。きれいな肌は皮膚の表面に常在菌がいるからです。この常在菌は、皮膚の脂肪をエサにして、脂肪酸という「酸性の膜」を作って皮膚を守っています。この膜が、外からのアレルゲンや悪い菌などが皮膚の中に入るのを防いでいます。そして、皮膚内部の水分が蒸発しないようにしています。ですから「しっとりした肌」が保たれるのです。
しかし、洗えばきれいになると思っている日本人はせっせと体を洗っています。洗いすぎは皮膚の表面にいる常在菌を洗い流してしまいます。すると、皮膚の角質層がバラバラとなり、アレルゲンが進入し、アトピー性皮膚炎になりやすくなります。また、皮膚の中の水分が蒸発して「乾燥肌」になるというわけです。
免疫学で最近有名な安保徹先生も、風呂に入っても、石鹸やシャンプーは週に1回程度しか使わず、それ以外は軽く洗い流す程度で充分だとおっしゃっていました。
その他、抗菌剤や殺菌剤の多用も目につくところで、悪い菌だけでなく、よい菌も一緒に駆除してしまいがちです。私も必要最低限度しかクスリは出さないようにしています。(自己判断でそれも飲んでいただけない場合もあり、それは困るのですが・・・)
ちなみに藤田先生はわざと体の中に「サナダムシ」という数メートルにもなる回虫を飼われているそうです。
除菌、殺菌という概念から共生という優しい概念に変ると、アレルギー疾患も減るのかもしれません。
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