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2007年6月30日 (土)

子供達の健康を守るために

先日、私が校医をしている小学校で配布したものです。

今の子供(大人も)が持つ3つの悪習慣が病気を作る

 文明国の中で、口呼吸が一番多いのが日本人です。また、食べる時間が一番短いのも日本人、睡眠時間が最も短いのも日本人です。

眠  3つの悪習慣

   横向きやうつ伏せで寝る事

   人間の頭は約5kgあります。横向き寝、うつ伏せ寝の場合、歯やあごに直接圧力がかかります。歯の矯正治療で1本の歯にかかる力は100グラム以下です。これくらいの力でも持続的にかかれば歯は動きます。つまり、寝相によって歯列矯正の数倍の力がかかる事になり、これが歯列やあごの変形につながり、それが全身のゆがみや筋肉のこり、痛みにつながります。

   片側で噛むこと

   片噛みを続けると、咬む側の頬は咀嚼運動(そしゃくうんどう)によって引き締まり、使わない側の頬は締りがなくなって、左右非対称になります。これが長く続くと、筋肉に引っ張られてあごや首の骨が曲がり、それに連動して背骨や骨盤と全身のゆがみにつながります。

   また、片噛みで噛む回数が減ると、唾液の分泌が減ったり、過食につながっ 

   たりするので、それが新たな病気につながることがあります。しっかり噛ん

   で唾液が食物に十分行き渡ると、食物の中に含まれる発癌物質のほとんどが

   無毒化されるとも言われています。唾液の量が不十分だと虫歯や歯周病が一

   気に進行します。

   口で呼吸する事

   のどには扁桃腺などによって構成される「ワルダイエル扁桃リンパ輪」という体の免疫機構の中でも最も重要な組織があります。口呼吸を続けると、そこの組織がだめになり、結果、免疫機能の低下によって様々な病気が引き起こされます。現代人は環境汚染や食遺品添加物などの影響で体内に入ってくる異物の処理にただでさえ免疫機構が疲労していると考えられますので、免疫機能の低下が加速します。これが、様々な病気を引き起こします。

睡眠について

   「質のよい睡眠を3~4時間取れば十分です」という方々がいらっしゃいま

   す。それは本当なのでしょうか?そこには体と重力の関係が考慮されていま

   せん。

   人間は、1Gという重力に逆らって立ったり座ったりしているだけで、かな 

   りのエネルギーを消耗しています。まして、激しい運動などをした場合は言

   うまでもありません。

   人間の体は生まれたときに約40兆個、成人で約60兆個の細胞でできてい

   ます。大雑把な言い方をすると、1日約1兆個の細胞が入れ替わり、60日

   で特殊な細胞を除けば新しい細胞に入れ替わります。これを「新陳代謝」と

   いいます。これが盛んに行われるのが寝ている間です。

   よく、「しっかり寝ないと背が伸びない」と言われますが、一理あります。

   特に免疫に関係する血液細胞は、骨髄や関節頭などで作られますが、起きて 

   活動している間はエネルギーが体を維持、支持する方に使われるため、造血

   の方まで手が回りません。

   「骨休め」という言葉があります。これは、先人が長年の体験の中で体感し

   てできた言葉なのでしょうが、免疫学から言ってもずばり的を射ています。

   人間の体は横になって骨組織が重力から解放されることによって、骨髄の中

   で造血のスイッチが入るようになっています。この事を無視していると、血

   液の病気(再生不良性貧血、血小板減少症、白血球減少症、悪性リンパ腫、

   白血病など)にかかりやすくなります。これに口呼吸のクセがあるとさらに

   加速します。

   病人が一日中横になっているのは何故でしょうか?この重力との関係を考え

   ると答えは明確です。

   人間は、横になって体の組織を重力から解放してやらないと、治癒が促進さ

   れないからです。

   動物は、病気や怪我をした時は、本能的に治るまでひたすらじっとして回復

   を待ちます。薬などでごまかして、いたずらに動き回るのは、どうやら人間

   だけのようです。

   また、昔から「温泉療法」というものがあります。これは、温泉そのものの

   成分による効能もあるとは思いますが、前述したように、温泉やお風呂に入

   ると重力から開放され(水中では重力の影響が約6分の1に減ります)、さ

   らに体が温められる事によって新陳代謝が促進される事が大きいと思われま

   す。

   日本人の「お風呂に入って湯船にゆっくりつかる」という習慣は、身体の事

   を考えると素晴らしい事です。最近は、シャワーだけで済ませる方が増えて

   いるようですが、ぜひゆっくり湯船に浸かって、身体をリフレッシュしてく

   ださい。

歯並びについて

   歯が生えてくる時に、なぜ今の場所に今の状態で生えてくるのでしょうか?

   口の中は、一見広い空間が開いているようですが、実はそうではありませ

   ん。外側は唇と頬で、内側は舌で埋められており、空間はほとんどないのが

   実情です。もし、空間が空いていたら食べ物はそこにたまってしまいますの

   で、歯の上に乗らず、うまく噛む事ができません。

   舌癌などで、舌を切除した方は、物がうまく歯に乗せられないので噛む事が

   できず、流動食をのどに流し込むしかないのは、この理屈からです。

   歯が生え始めると、唇や頬、舌に当たりだします。そして、外側からと内側

   からと押されながら、その力のバランスが取れるところに安定します。

   今の子供たちは、あまり固いものを食べないとよく言われます。また、政府

   が母乳で育てなさいとの答申を出して、反発をくらっていますが、統計的に

   見ると確かに母乳による育児の割合や期間が昔に比べて減っています。

   哺乳ビンに比べて母乳を飲むためには、赤ちゃんはものすごく口唇や頬、舌

   の力を使います。それは冬でも汗をかくくらいの運動量です。また、欧米で

   は3,4歳くらいまでおしゃぶりを使いますが、日本はかなり早い時期に離

   乳を勧めたり、おしゃぶりを止めさせたりします。これは、口呼吸を誘発す

   る事にもつながります。

   その様な理由から、舌が鍛えられずに力が弱まり、歯が舌の方向、つまり内

   側へ倒れて生える傾向にあります。

   すると、歯の並ぶスペースが小さくなって顎の骨に歯が並びきれず、歯並び

   が悪くなるのはもちろん、舌が下の歯の内側に収まりきれなくなります。す

   ると舌が歯の上に乗ってきて、気道を狭くするようになり、呼吸がしにくく

   なります。そのため、気道を空けるために、無意識に下顎を前に突き出すよ

   うな姿勢になります。だから、今の子供たちは猫背に見えます。

   また、その姿勢の影響で首がゆがみ、それが全身のゆがみにつながり、姿勢

   が悪くなります。

   また、いつも酸欠気味なので、顔にしまりがなく、目に力がなく、子供なの

   に疲れやすい、元気がないといった症状につながります。

   今の矯正治療は、ほとんどが永久歯に生え変わってから上下左右1本ずつ歯

   を抜いて、そのスペースを利用して歯を並べていきます。という事は、元々

   狭い歯列をさらに狭くする事につながります。この事を皆様はどう考えられ

   るでしょうか?

   事実、抜歯を伴う矯正治療後に体調を崩している方がいらっしゃるのも事実

   です。なるべくならば、抜歯をせずに、済ませたいものです。しかし、抜歯

   したくないからといって歯列不正を放置していると、結局歯列の狭窄から舌

   の収まる場所がなくなりますので、結果は同じになります。

   歯を抜かずに(結果的に抜歯を避けられない場合もありますが)、顎の骨を

   広げて歯を並べるスペースを作るような矯正の方法もあります。これは、  

   「床矯正」と呼ばれるもので、小児歯科を中心に行われています。ヨーロッ

   パでは盛んに行われているのですが、アメリカでは抜歯矯正が盛んなため、 

   日本もそれに追従してきたのが現状です。

   先日の歯科検診を行って、一般的な学校歯科の検診基準での歯列不整にはあ

   てはまらないが、前述した舌との関連を元にした基準で判断すると、少なく

   見積もっても半数前後の子供たちが、将来的に何らかの歯列不整とそれに伴

   う舌の位置異常を引き起こすだろう、あるいは既にその徴候が見られると感

   じました。

   ここの所は、歯科医師の中でも見解が分かれるところですので、あくまで私

   個人の意見として聞いておいてください。詳しくは、かかりつけの歯科医師

   に相談されてみて下さい。

最後に

   私はここ数年、歯科疾患と全身健康との関連をテーマに研究を続けておりま

   す。最近は、一見歯科とは無縁のような病気が歯科治療で軽快したり、治癒

   したりしています。本日書いた内容も、その中のほんの一部です。また機会

   があれば、皆様の役に立つ情報を提供していきたいと思います。

   とにかく、体が健康でなければ気力も沸いて来ません。

   私事で恐縮ですが、私の父は高校の国語の教師をしておりました。とある病

   気で入院した時、日頃は忙しいのでゆっくり本でも読んでもらおうと数冊差

   し入れをしたのですが、結局1冊も読めなかったと聞きました。やはり、健

   全な体に健全な精神が宿るのだと改めて痛感した覚えがあります。

   ぜひ、付属小の生徒全員が、元気はつらつとした小学生であっていただきた

   いと思います。

   私自身、学校歯科医師として、いつでもご相談等に応じますので、今日の内

   容に関わらず、歯科に関して解らないことがありましたらお気軽にお尋ね下

   さい。

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2007年6月25日 (月)

口腔ケアと全身の関係

私は国立病院機構熊本医療センター(旧国立病院)の登録医をしているのと、歯科医師会でも担当をしている兼ね合いで、よく、医科のドクターも含めて身体を総合的に捉えたお話を聞く機会がよくあります。

先日、血液疾患のお話を聞く機会があったのですが、その中で、口腔清掃を行うと、白血病などの血液疾患の予後が良くなるというデーターが示されました。

白血病では、骨髄移植や臍帯血移植などを行う際に、元の悪い癌細胞を殺すために、強い抗がん剤などを投与しますが、その副作用の一つに口内炎があります。最初は、その痛みや摂食障害を少しでも軽くするために、附属の口腔外科に依頼して、口腔清掃を行ったそうです。すると、口内炎はもちろんの事、白血病そのものの予後も良くなって、ドクター自身が驚かれているという事でした。

この事は、統計的にもはっきりと有意差が出ており、学会でも発表されて全国的に注目されているということです。今年の秋から、歯科医師会とタイアップして、血液内科以外の科も含めて口腔ケアーにより積極的に取り組んでいく事になっております。今後のデーターが楽しみです。

人間は無菌的に生きる事は不可能です。体内や体の表面にはたくさんの種類の細菌がいて、共生関係を保っています。それが、最近の日本人は度を越したキレイ好きがあだとなって、かえって最近などに弱くなっていると言われています。

例えば、最近は沈静化しましたが、少し前に東京を中心として流行した「はしか」もそうです。我々の常識では、予防注射をしたら一生かからないと思っていましたが、今回は予防注射をした人にも発症しているようです。(今回の感染者は、予防注射の問題点から任意になって、していない方も多かったようです)

それは、予防注射をした後も、昔は、はしかの菌をもらう機会が時々あり、そのたびに感染はしたが発症はしないまま治ったという状態だったそうです。体の免疫は、その都度はしかの菌を再認識して免疫機構を保っていたのですが、最近は、はしかの菌に接触する機会が極端に減ったか、なくなったため、体の免疫が、はしかの菌をだんだん忘れてしまったという状態で、感染、発症につながったのではということでした。

体の免疫器官の多くは入るところと出るところ、つまり、口からのどのまわりにかけてと、腸から肛門にかけてのところに集中しているそうです。これは、外からの細菌が一番進入しやすいところですので、納得のできる所です。

赤ん坊は、まず、なめたり口に入れたりして物を認識します。目、耳、鼻といった感覚での物の認識は、もっと成長してからだといわれます。物を口に入れて、それについている様々な雑菌を、体の免疫機構が認識する事によって、強化されていきます。最近は、おもちゃに至ってまで抗菌グッズでないと売れないとも言われています。果して、それは良い事なのでしょうか?

病院などの特殊な環境ならば、普段は遭遇しない特殊な菌などが存在する可能性がありますので、不用意に触ったりしないほうが良いでしょうが、日常生活の中で、部屋の中で触れるものは、そこまで過敏になる必要はないのではないかと思われます。

自分が子供の頃、例えば持っているお菓子が地面に落ちたら、汚れをフッと息で飛ばして、平気で食べていました。

もう一度くり返します。人間は無菌的な状態では決して生きられません。細菌とうまく共生する必要があります。だとすれば、清潔、抗菌に走るよりは(最低限はもちろん必要だと思いますが)、細菌に強い身体を作る方を心がけた方が良いのではないでしょうか?そろそろ発想の転換が必要な時期に来ている気がします。

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2007年6月14日 (木)

21世紀の歯科医療

6月9、10日と、東京で行われました日本顎咬合学会学術大会に参加してきました。この大会には、日本で名実共にトップといわれる講師陣や、それに続く中堅、若手の講師陣が発表を行いますので、非常に参考になる大会です。

内容は、歯科の色々な分野にわたり、今回は食育といった、歯科以外の講師陣も来られていました。まあ、口は食のスタート地点ですので、大いに関係あるとも言えますが。

私も興味ある講演をいくつか聴いて回りました。(いくつもの講演が平行して行われますので、自分の興味ある所で聞く事になります)

今、最も多いのは審美とインプラント関連の講演で、多分、全体の半分くらいを占めていたのではないかと思います。歯科の商業雑誌を見ても、そのあたりの記事が大半を占めますので、時代の流れだと思います。

その中で、私が興味を持って聞いたのが、口腔(口の中全般)と全身のかかわりについての講演です。これは、私がこのブログを始めたきっかけのテーマでもあり、私自身が今、一番力を入れて取り組んでいる分野です。

以前はあまり見られなかったこのテーマが、ここ数年、少しずつ目につくようになってきました。歯科医師ではなく、口腔医として口の中を全身の一部として、全身とのつながりの中で見ていく事が、これからの歯科医療の進む道だと私は確信しております。

参考になる発表がいくつかありましたので、追ってご紹介していきます。今回は、歯並びと舌、姿勢の関係です。歯が生えてくる時に、なぜ今の場所に今の状態で生えてくるのでしょうか?

口の中は、一見広い空間が開いているようですが、実はそうではありません。外側は唇とほっぺたで、内側は舌で埋められており、空間はほとんどないのが実態です。もし、空間が空いていたら食べ物はそこにたまってしまいますので、うまく噛む事ができません。舌癌などで、舌を切除した方は、物が食べれないので流動食をのどに流し込むしかないのは、この理屈からです。

歯が生え始めると、唇やほっぺた、舌に当たりだします。そして外側からと内側からと押されながら、その力がバランスが取れるところに安定します。

今の子供たちは、あまり固いものを食べないとよく言われます。また、政府が母乳育てなさいとの答申を出して、反発をくらっていますが、統計的に見ると確かに母乳による育児の割合が昔に比べて減っています。哺乳ビンに比べて母乳を飲むためには、赤ちゃんはものすごく口唇やほっぺた、舌の力を使います。それは冬でも汗をかくくらいです。また、欧米では3,4歳くらいまでおしゃぶりを使いますが、日本はかなり早い時期に離乳を勧めたり、おしゃぶりを止めさせます。これは、口呼吸との兼ね合いもあるのですが、それはまた違う機会に書きます。

その様な理由から、舌の力が弱まり、歯が舌の方向、つまり内側へ倒れて生える傾向にあります。すると、歯の並ぶスペースが小さくなって歯並びが悪くなるのはもちろん、舌が下の歯の内側に入りきれなくなります。すると舌が歯に上に乗ってきて、軌道を狭くするようになり、呼吸がしにくくなるので気道を空けるために、下顎を前に突き出すような姿勢になります。だから、今の子供たちは猫背に見えます。また、首のゆがみが全身のゆがみにつながり、姿勢が悪くなります。また、いつも酸欠気味なので、顔にしまりがなく、目に力がなく、子供なのに疲れやすい、元気がないといった症状につながります。

今の矯正治療はほとんどが永久歯に生え変わってから上下左右1本ずつ歯を抜いて、そのスペースを利用して歯を並べていきます。という事は、元々狭い歯列をさらに狭くする事につながります。この事を皆様はどう考えられるでしょうか?事実、矯正治療後に体調を崩している方が結構いる事は事実です。

では、どうすればよいか?私の考えをまた次の機会にでも書きたいと思います。

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2007年6月 1日 (金)

厄年に思う

私自身は先月で43歳になりましたので、大きな災難に遭う事もなく厄年を過ぎる事ができました。しかし、まわりの話を聞くと、結構自分や自分の周りの方が災難に遭っている事例を聞きます。

私が今取り組んでいるかみ合わせを治して全身の健康を取り戻すという治療において、よくよく問診してみると、厄年前後から体調が悪くなったという方が、かなりたくさんいらっしゃいます。

厄年は、皆様もご存知のように一生のうちで何回かあるそうですが、その中でも一番重要視されるのが、男の40歳、女の33歳です。

私がかみ合わせと全身健康の話をとある雑誌に掲載してから、結構問い合わせがありますが、そのほとんどが女性です。私なりにその原因を考えてみますと、男性の場合は「少々の体調不良くらいでは・・・」というやせ我慢や、「仕事が忙しくて・・・」と言った理由が浮かんできます。それに対して、女性の方が現代に置いては行動力があり、また、男性に比べて筋力がない分、症状が顕著に出やすいのではないかと思います。

来院のほとんどを占める女性を分析してみますと、厄年の33歳前後と更年期と言われる年代の方がほとんどです。やはりそのあたりでホルモンバランスなどの体の変化が顕れるのでしょう。

また、それまで若さの柔軟性で何とかしのいできたものが、耐えられなくなって、強い症状として出てくる場合もあるのでしょう。

厄年と言うものがいつ頃から存在するのか、私自身はよく知りませんが、やはり先人が経験の中で経験則として確立したものなので、我々も真摯に受け止める必要があるのだと、日々診療をしながら感じているところです。

神社にお払いに行くかどうかは個人の自由だとしても、その年齢を意識して、あまり無理をしない生活を心がける一つの転機なのでしょう。かといって、あまり楽をするとアレルギー疾患などになりやすくなると免疫の大家である安保徹先生はおっしゃっていますが!

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