歯にも遊びが大事?
車のハンドルにも、わざと遊びが設けてあります。
これがないと、ものすごく運転しづらいそうです。
我々の歯にも、実はこの遊びが大切なんです。
歯科医師や、歯科技工士は学生の頃、石膏の棒を一生懸命削って歯の形を再現します。歯型彫刻と言い、私の学校では、通称「いもほり」と呼んでいました。
この時参考にするのは、生えたてのきれいな歯です。咬合面(かみ合わせる面)が山谷はっきりしていて、いかにも「咬めそうだな」と思ってしまいます。
日常の歯科診療の中で、自分で歯を作る歯科医師はほとんどいないと思いますので、通常は歯科技工士さんに作っていただきます。
歯科技工士さんは、職人的な気質を持った方が多く、美的センスからか、見た目も重要視されるので、格好よく作らないと納得がいかないみたいで、生えたての「一見格好の良い」歯をよく作られます。
実は、これがトラブルの元になることがあります。
人間の歯は、生えた時から「咀嚼」という機能を果たします。その結果、歯はその人の機能に合うように、咬耗(すり減る)していきます。
咀嚼運動を細かく見ると、「せん断」「圧断」「臼磨」という行程に分かれます。
せん断とは物をかみ切る動作、圧断とは物をつぶす動作、臼磨とはものをすりつぶす動作です。これを繰り返すことによって食べ物はだんだん小さくなって、最後は嚥下で飲み込みます。例えると、すりこぎみたいなものです。
生えたての歯がずらっと並ぶと、上下の歯ががっちりロックして「臼磨」ができません。例えると、すりこぎ棒で物を上下にたたいているだけで、ギュッとすりつぶすことができない状態です。
このような人は、ある程度食べ物を噛んで柔らかくなったら、飲み込んでしまいます。そのため早食いになり、肥満等にもつながることがあります。
歯の治療をしていて、かみ合わせの調整をするときに「ギリギリと歯ぎしりしてみてください」と言っても、下あごがまったくロックして動かない人がいます。歯を見ると、山谷がはっきりしていて、一見格好の良い歯です。
しかし、我々の仲間からすると、「食べにくそうだな」「首や肩が凝りそうだな」などという様々な想像をかきたてられます。
歯にも人生にも適度な遊びは大切なのでしょう。あくまで「適度な」という形容動詞は付きますが(笑)
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