歯ぎしりの恐怖パート1
従来歯科の2大疾患といえば、虫歯と歯周病でした。ところが、最近それに顎関節症を入れて3大疾患と呼ばれる場合が出てきました。少し前になりますが、熊本出身の森高千里がかかって一時期芸能活動を休んだ事で有名になりました。顎関節症につきましてはあらためて書きますが、この原因の一つが歯ぎしりだと言われています。
現代は軟食の時代で、ほとんどの料理に火を使いますし、むかしのように砂が混じったような食べ物を食べることもありませんので、食事で歯がすりへる事はほとんどありません。
にもかかわらず、歯が擦り減っている人が多数いらっしゃいます。一度鏡で自分の歯をじっくりと眺めてみてください。
まず、前歯、特に下の前歯を見てみて下さい。生えたての前歯は、一つの歯に対して小さな山が3,4つかみ合わせの面に並んでいるような形をしています。その部分がまっ平らに擦り減って、テカテカと光っていないでしょうか。上の前歯にも同じ様な徴候ありませんか。
次に前から3番目の糸切り歯、あるいはその奥の4,5番目の小臼歯を見てみて下さい。これらの歯は生えたときはその先端が一つの山のようにとがっています。そこの先端が富士山のように平らに擦り減っていないでしょうか。
次はさらに奥の6,7番目の大臼歯です。ここは一つの歯に大きな山が4つくらい集まったような形をしているのですが。ここも山の先端が擦り減ってはいませんか。あるいは、表面のエナメル質はなくなって、中の黄色い象牙質の色が見えてきてはいませんか。
以上のような徴候が認められたら本人が自覚していなくても、必ず歯ぎしりをされていると断言できます。
その他に、上あごの天井の部分や下あごの4,5番目の歯の内側に骨が出っ張っている方も(これは外骨症といって、入れ歯の邪魔にならなければ特に治療の必要はありません)歯ぎしりを持っておられます。
歯ぎしりというと、みなさんあの「ギリギリ」という音を連想されると思います。ところが、音のしない歯ぎしりもあります。
歯ぎしりは3種類に分類されます。一つはぐラインディングといって、いわゆる「ギリギリ」と音をたてるタイプ。二つ目はタッピングといって「カツカツ」とかみ合わせて音をたてるタイプ、3番目はクレンチングといって、グーっと食いしばるタイプです。これは音はしませんし、歯もあまり擦り減りませんので、前述したような徴候があまり認められない場合もあります。
日中の起きている時は、意識があるため歯や周辺組織を傷めるような必要以上の咬む力が出ないように脳神経でうまく制御されています。ところが、寝ている時は意識が無いため、その制御がうまく働かず、物を貯める時の数倍から数十倍の無理な力が歯にかかってしまいます。その結果、男性で咬む力の強い方は、虫歯も何も無い健康なご自分の歯を、自分で噛み割ってしまう場合もあります。
ためしに、歯ぎしりをして「ギリギリ」と音をたててみて下さい。多分できる方はほとんどいないのではないでしょうか。反射が働いて、必要以上の力がかからないように無意識のうちに制御されてしまうのに加えて、唾液が十分に出ていますので、摩擦力も低くなるため滑って音をさせる事は至難の業です。逆に、寝ている時は唾液の分泌が少なくなるため口の中が乾く事により摩擦が強くなり、歯に砥石をかけているような状態になってしまいます。
最近、歯が割れて抜歯になる方が増えてきました。様々な原因があるとは思いますが、その中心となるのがこの歯ぎしりではないかと私は感じています。では、なぜ歯ぎしりをするのか、それを止めるにはどうすればよいのか、歯の破折以外にどんな弊害をもたらすのかなどはまた次回書きます。
| 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)
最近のコメント